第2章

友人の高橋桜子の声を聞いて、私の頭がようやくはっきりしてきた。今日は彼女と一緒に買い物に行く約束をしていたのだ。松本真一の2ヶ月後の誕生日プレゼントを探すためだった。

そのことを思い出し、私は深いため息をつきながら尋ねた。「美咲、今私を迎えに来られる?松本真一に追い出されて、私たち別れたの。」

「えっ?場所を教えて、すぐに行くから!」高橋桜子は怒りの声を上げ、私が送った住所を受け取るとすぐに電話を切って急いで向かってきた。

私は意気消沈して階段に座って待っていた。十数分もしないうちに、彼女の車が目の前に現れた。

「あいつ、この最低野郎!よく別れたわ。私の家に来て一緒に寝ましょう!私がいる限り、絶対に路頭に迷わせたりしないわ!」私が頼む前に、高橋桜子は怒り心頭で車のドアを開け、私の行き先を決めてくれた。

私が頷いてスーツケースを取ろうとした時、骨ばった大きな手が先に私のスーツケースを掴み、重たい荷物を軽々と持ち上げた。

見上げると、その手の持ち主は切れ長の目と通った眉、はっきりとした輪郭を持ち、まるで女媧が丹精込めて彫刻したかのような整った顔立ちをしていた。

私たち二人が並ぶと、彼は気高く完璧な王子様で、私は汚らしい乞食のようだった。

「こちら私の弟の高橋大輔よ」高橋桜子は私の肩を抱きながら、彼への観察を遮った。「たまたま荷物を持つのを手伝ってくれることになったの。」

彼女の言葉で、私は高橋桜子に6歳年下の弟がいたことを思い出した。子供の頃から私たち二人の後をついて回っていた。

19歳の時に海外に留学に行き、私が高橋桜子の家に遊びに行くときはよく美味しいものを持って行って、弟のように可愛がっていた。

こんなに年月が経って、こんなにハンサムになるなんて思いもしなかった。

「ありがとう、弟くん」私は彼に頷きながら、丁寧にお礼を言った。

「大輔と呼んで」彼の口調は優しさの中に命令するような響きがあった。

私は彼が年下扱いされるのを嫌がっているのだと思い、急いで言い直した。「じゃあ、ありがとう、大輔」

言い終わると、彼の口角が少し上がるのが見えた。やっぱり弟だな、と思った。呼び方にまでこだわるなんて子供っぽい。

でも私と高橋桜子は姉妹のように仲が良いのだから、彼女の実の弟のそんな些細な願いを叶えてあげるのも悪くない。

高橋桜子の車に乗ると、彼女は私の手をずっと強く握りしめ、松本真一のこれまでの渣男ぶりを延々と数え上げた。

彼女は私のことを全て把握していて、そして過去の出来事が映画のシーンのように次々と私の脳裏に浮かんできた。でも私は泣かなかった。

松本真一に別れを切り出されてから高橋桜子の家に落ち着くまで、私は一滴の涙も流さなかった。

高橋桜子は特別に一日を空けて私に付き合ってくれて、いつものように彼女とふざけて遊んだ。ただ、傍らに彼女の弟がいたことが違っていた。

私はずっと彼が私を見つめているような気がした。私はもう身なりを整えて、ちゃんとした姿になっているのに、なぜまだ私を見つめているのだろう。

でも振り向いて見るたびに、彼は無邪気な表情で無言で「どうしたの?」と尋ねてくるのだった。

心が落ち着かないのは私の方になってしまった。

もしかして、別れた後で男性に敏感になっているのだろうか。

幸いなことに、高橋桜子は一人暮らしで、夕食後にはあの人神共に憤るほどのイケメン弟の高橋大輔は帰っていった。

私はようやくくつろげた気がした。

「あっ、美咲、突然出張の連絡が来たの。担当しているプロジェクトに問題が発生して、今すぐ隣町に行かなきゃいけないの。あなた今...一人で大丈夫?」私たち二人がソファーでテレビを見ていた時、高橋桜子は心配そうに私に尋ねた。