七年間付き合ってきて、高橋一行は完璧な恋人と言えるでしょう。
彼は青葉市で名を馳せた若手実業家で、青葉市のすべての女性の心の中の理想の恋人でした。
誰もが、彼のような人物の周りには次から次へと女性が現れるはずだと思っていました。しかし、意外なことに、彼が成功してからは、目立たない私だけが彼の傍にいました。
私は彼ほどの家柄ではなく、容姿も平凡で、仕事も普通程度。そんな平凡な私が、高橋一行の傍に一年また一年と居続けていました。
そして高橋一行の私への態度も申し分ありませんでした。七年間の付き合いで、私が欲しいものは何でも、高橋一行が何とかして手に入れてくれました。
私の親友までもが、よくからかってきました。提灯を持って探しても、こんな素敵な男性は見つからないと。
私の両親までもが、高橋一行のことを非常に気に入っていました。
ただ一つ良くないことがありました。高橋一行と七年間付き合っていても、彼は一度も結婚の話を持ち出したことがなかったのです。
「優花ちゃん、高橋くんに聞いた?いつ結婚するつもりなのか?あなたたちもう若くないんだから、私たちがまだ孫の面倒を見られるうちに、早く結婚して子供を…」
母がまた細々と話し始めました。私は苦笑いして、適当な理由をつけて電話を切りました。
私だって高橋一行との結婚を考えていないわけではありません。何度も暗に示唆してきましたが、毎回彼からの返事は適当なものばかり。本当に追い詰められると、冷たい目で私を見て、淡々と「優花、もう少し待って。僕たちの事業が安定してから」と言うだけでした。
でも私は一年また一年と待ち続け、彼が無名の若者から今日の成功した若手実業家になるまで付き添ってきました。私の青春を使い果たしても、彼からのプロポーズは待てませんでした。
私は苦く笑って、カレンダーに赤く丸をつけた七周年記念日を見つめながら、心の中で期待が湧き上がってきました。
もしかしたら、高橋一行が今日プロポーズしてくれるかもしれない?
高橋一行に電話をしようかと考えていたところ、親友の山田甘奈からの電話が先に来ました。
「優花!あなたの高橋一行がプロポーズするんじゃない?!」電話に出た途端、山田甘奈の興奮した声が響いてきました。
私の心は何かに強く打たれたように、喜びが心いっぱいに広がっていきました。
山田甘奈が根拠のない話をする人ではないことは分かっていましたが、それでも心の高ぶりを抑えながら急いで尋ねました。「誰から聞いたの?」
「私が直接見たのよ!彼が暗色で大勢の人に指示を出して会場を飾り付けてたわ!すごく豪華だったわよ!見てるだけで羨ましくなっちゃった。それに、あなたの高橋一行ったら、あんなに慎重な様子で、まるで何か世界の至宝でも扱ってるみたいだったわ…」
山田甘奈はまだ延々と話し続けていましたが、私はもう一言も耳に入りませんでした。口元には大きな笑みが浮かんでいました。
高橋一行が今夜プロポーズしてくれることを、心の中でもう八割方信じていました。
暗色は、私たちが初めて出会った場所でした。
もうこの話は八割九分確実だと思いましたが、それでも心に溢れるピンク色の泡を必死に抑えながら、恥ずかしそうに「そんなこと言わないで、プロポーズのためじゃないかもしれないじゃない!」と言いました。
山田甘奈は私の恥ずかしそうな様子を見てしばらくからかった後、すぐに反論してきました。「そんなわけないでしょ!あの慎重な様子を見てたら、プロポーズ以外考えられないわ!それに、もうそろそろ結婚してもいい頃でしょ!」
「それに、あなたたちの七周年記念日って、この数日のうちじゃなかった?」
私の気持ちはさらに弾んで、嬉しそうに答えました。「今日よ!」
少し考えてから、山田甘奈に念を押しました。「誰にも私が知ってることは言わないでね!」
山田甘奈は分かってるという表情で答えました。「はいはい、高橋様のサプライズを台無しにしちゃいけないものね!」
山田甘奈とまだしばらく冗談を言い合ってから、やっと電話を切りましたが、心の中の甘い気持ちは抑えきれませんでした。
七年間付き合ってきて、高橋一行がこんなにロマンチックな演出をしたことは一度もありませんでした。まさか、大きなサプライズを準備していたなんて!
その夜に待ち受けている重要な瞬間を思いながら、急いで上司に休暇を申請し、家に飛んで帰って、身支度を始めました。