番外

幼い頃から、家族は私と村上静香が一対だと言っていた。

でも、彼女と一緒にいるたびに、何かが足りないと感じていた。藤原優花に出会うまで、それが恋人同士の情熱だということに気付かなかった。

残念ながら、気付くのが遅すぎた。

藤原優花と初めて出会ったのは、ダークバーだった。

彼女は小柄で、親友の後ろをついて歩きながら好奇心旺盛に辺りを見回していたが、少し臆病そうだった。

彼女は目が良かった。密集した人混みの中で、一目で私と目が合った。

その日の彼女の輝く瞳と、勇気を出してLINEを聞きに来た時の赤らんだ頬しか覚えていない。

当時、こんなに矛盾した人がいるのかと思った。大胆で臆病な人。

その後、彼女に再び気付いたのは、村上静香が突然いなくなった時だった。

正直に言うと、村上静香の突然の別れは、私にとって大きな打撃だった。

あれほど仲が良かったのに、なぜ彼女は簡単に私を捨てることができたのか。まるで要らない犬や猫を捨てるように。

私は途方に暮れ、毎日お酒に溺れるようになった。

そんな時、優花が私のそばにいて、全ての面倒を見てくれた。

おそらく、その時に私は彼女に恋をしたのだろう。

彼女が付き合うと承諾した時、私は恥ずかしながら彼女を強く抱きしめてキスしたいと思った。仕方がない、彼女があまりにも可愛かったから。

その衝動を抑えるのに、どれほどの努力が必要だったか、神のみぞ知る。

もし私の大切な彼女を怖がらせてしまったらどうしよう?

付き合ってからも、彼女はいつも私に合わせ、私の面倒を見てくれた。

でも当時の私は若すぎて、プライドが高すぎて、自分が既に藤原優花に恋をしていることに気付かなかった。

その後、村上静香が帰国し、友人たちと食事会を約束した。数年前の未練が再び湧き上がり、優花へのプロポーズの計画を延期して、約束に向かった。

優花が突然来るとは思わなかったし、村上静香がそこまで厚かましいとも思わなかった。

彼女は優花が入ってくるタイミングを見計らって、わざと転んで私の胸に倒れ込んだ。そのため、優花が扉を開けた時に目にしたのは、村上静香が演出した偽りのキスシーンだった。

彼女が怒っているのは分かっていた。でも、あんな下手な演技なら、優花にはすぐに分かるはずだと思っていた。