第1章

「安心して、もうここにいて邪魔はしないわ。今日中に出て行くから」

目を開けた瞬間、そんな言葉が聞こえてきた。

目の前は見覚えのある、でも何か違和感のある光景。そして、拳を握りしめたくなるほど見覚えのある人物。

極寒の終末世界を数十年さまよった私は、この骨身に染みた恨みを忘れられると思っていた。でも、目を開けた今、一瞬たりとも忘れられないことに気づいた。

どうして忘れられるはずがない?

この人たちは私の家族なのだから!そして、私を殺した犯人たちなのだから!

私は極寒が襲来して三ヶ月目に死んだ。死んだ時、両足は折れて動けず、大きく開け放たれた窓から吹き込む冷たい風に、部屋の中で凍え死んだ。

そして私を死に追いやった犯人は、ただ数滴の涙を流しただけで、私の愛する家族たちに囲まれ、優しく慰められていた。

私の彼氏までもが、彼女に忠誠を誓っていた。

でも私は死んでも消えることなく、魂となってこの世界に留まり、すべての真実を知ることになった。

私は本物のお嬢様で、生まれた時に偽物の両親によって意図的にすり替えられていたのだ。

二十年間苦労し、体中傷だらけになった。やっとあの忌々しい夫婦が事故死して、補償金を受け取れるはずだった時、偽物の村上笑子が現れ、私を実家に連れ戻し、本来の人生を取り戻そうとした。

彼女は実の両親の補償金も、養父母からの補償金も手に入れ、悠々と外に引っ越していった。

一方私は一銭も受け取れず、実の両親からは冷たい目で見られるだけだった。

私が来たことで、彼らの愛する娘を追い出してしまったからだ。

それだけではない。実の弟に階段から突き落とされ、両足を骨折。そのせいで、村上笑子が意図的に窓を開けて私を凍死させようとした夜、抵抗することもできなかった。

しかし天は私を憐れみ、極寒の終末世界で数十年間、魂として漂うことを許してくれた。

そしてついに、極寒が襲来する十日前に戻ることができた。

それは私が本当の身元を認められた最初の日でもあった。

私と入れ替わった村上笑子は、前世と同じ言葉を口にしていた。前世の私は気が立っていて、彼女を追い出そうとしたばかりに、みんなから嫌われる結果となった。

この家族が薄情者だということはとうに分かっていた。十年の生死を経験し、悲しみなど感じず、ただ嫌悪感だけが残っていた。

だから私は彼女の手を取り、悲しそうな表情を作って言った。

「村上笑子さん、私より少し年上よね?お姉さんって呼んでもいい?」

「あなたもお父さんとお母さんの娘なのよ。このまま出て行ってしまったら、お父さんとお母さんがあなたを育てた年月の思い出はどうなるの?ここに残って、私と仲良く暮らしましょう」

私は強がって村上昇太と森川美咲の夫婦を見つめ、悲しそうな笑顔を浮かべた。

「あの夫婦は私を虐待し続けたけど、笑子お姉さんは罪のない人。厚かましいかもしれないけど、お父さん、お母さんって呼ばせてください」

「お父さん、お母さん、笑子お姉さんを置いていってもいいですか?」