この別荘が私の財産だと知った後、山本健一と木村蘭子は佐藤明美と木村峰雄のところへ行って大騒ぎを起こした。
「お母さん、お父さん、この別荘は私のものだって言ってたじゃない?どうして急に兄のものになったの?今までの話は全部嘘だったの?私をからかってただけなの?」
木村蘭子は目を真っ赤にしていた。もし山本健一が支えていなければ、彼女はその場で崩れ落ちていただろう。
「あなた...誠くん!あなたたちは私の子供よ。私は平等に扱うわ。もうこの件については話さないで。私が何とかするから!」
佐藤明美は頭を抱えていた。私が彼女の面子を無視して、山本健一夫婦に真実を明かすとは思っていなかったのだろう。
この騒動で木村蘭子は胎動が不安定になり、以前診てもらった漢方医のところへ行って診察を受けることにした。胎児に問題が起きないようにするためだ。
私は彼らが漢方医のところへ行くことを知らなかった。佐藤明美が私に薬を飲ませたことを心配して、私も体調を確認するために行ってみたが、そこで思いがけない事実を目にすることになった。
以前、私はこの漢方医に山本健一の不妊症を診てもらい、その治療のおかげで木村蘭子は妊娠できたはずだった。
しかし、真実はそうではなかった。
診察を終えて病院の近くの公衆トイレに行くと、そこで木村蘭子と漢方医の孫に出くわした。
「この二人がここで何をしているんだ?」
私は足を止め、二人の会話を聞くことにした。
「この子を下ろすのか下ろさないのか、はっきりしてくれ」
「下ろすわけないでしょう!あなたと私の子供よ。なぜ下ろさなきゃいけないの?今は養ってくれる人もいるのに。臆病者のあなたは一体何を恐れているの?」
木村蘭子の声は泣きそうだった。
男はすでにイライラしていた。
「下ろしたって構わないだろう。おじいちゃんに頼んで山本健一に薬を出してもらえば、いずれ二人とも子供を授かれるはずだ!なぜこの子にこだわるんだ?!」
「私はこの子なんて欲しくなかったの!私はまだ20歳で、医学部の学生よ。人生これからなのに、同級生に子供がいることを知られたら、どう思われるかしら?学校を辞めてあなたと一緒に家で子育てするわけにはいかないでしょう?」
この子は山本健一の子供ではない?
つまり、彼の不妊症は治っていなかったということ??!