第9章

あの別荘が私の名義の財産だと分かってから、山本健一と木村蘭子は大分おとなしくなり、私も以前の物置から引っ越して、長い間空いていた部屋に移りました。

パソコンに詳しい友人に頼んで監視装置を入手し、佐藤明美夫婦の寝室に設置しました。木村蘭子の方は、私が直接尾行することにしました。

私は彼女があの若い男と会う機会が本当に多いことに気付きました。ほとんどの場合、若い男が彼女を呼び出して、子供を堕ろすか、事故を装って流産したように見せかけるよう説得していました。

「とにかく、この子供は絶対に産ませられない！」

木村蘭子が帰った後、私がオフィスに入ると、若い男は私を見て、イライラした様子で言いました。「予約されていますか？田中医師は今いないので、外で少しお待ちください。」

「あなたが田中大輔？私の妹を妊娠させた張本人？」

私は不満そうな表情で彼を見つめました。

田中大輔は体を震わせ、急に顔を上げて私を見ました。その瞬間、彼が土下座して秘密を守ってくれと懇願するのではないかと思ったほどでした。

「秘密は守ってあげられます。あなたの身元も明かさないようにできます。でも、一つ条件があります。」

「は、はい...私にできることなら、何でも従います！」

田中大輔は震えながら床に跪きました。彼は医学部の優等生で、不倫相手だということが広まれば、彼自身だけでなく、おそらく祖父の名誉まで傷つけることになるでしょう。

だから彼にとって、これは絶対に漏らしてはいけない衝撃的な秘密だったのです！

家に帰ると、家の雰囲気が少し重たくなっていました。

「どうしたんだ？」

木村峰雄は私を見て、重々しくため息をつきながら言いました。「お母さんの会社の資金繰りに問題が出て、今倒産の危機に直面しているんだ。数百万か数千万円がないと、立て直すのは難しいだろうな。」

私は胸が騒ぎ、驚いて言いました。「どうして急にそんなことに？」

「どういうわけか分からないんだが...」

佐藤明美はため息をつき、さりげなく私の方を見ました。

私の心臓が一瞬止まりそうになりました。

突然、父が死ぬ前に私に遺産を残していたことを思い出しました。今考えると、その遺産はかなりの額だったのかもしれません。

彼らがそのお金を手に入れる唯一の方法は、私に手を出すことでした。