第16章

鈴木誠は私に一連の妊婦健診を手配してくれました。

私たちはまず区役所に行き、それから車で病院へ向かいました。

病院に入ると、ロビーで記者会見が行われていました。海外の天才外科医が前例のない無料診療を行うというのです。

壇上の顔は国際ニュースや医学雑誌で何度も見かけたことがありました。

病院の統一された白衣を着ていても、その端正な容姿は少しも損なわれず、金縁の眼鏡が絶妙にマッチしていました。

診察室から検査結果を持って出ると、廊下が騒がしくなっていました。

群衆の中で、伊藤瞳子が池田勇人の腕を掴んで「勇人お兄さん、説明させて、私わざとあなたを騙したわけじゃないの」と言っていました。

池田勇人は私を見つけると、急いで近づいてきました。

彼に乱暴に引っ張られて転んでしまった伊藤瞳子には全く目もくれませんでした。