その日、高橋知明がどれだけ泣いてわめいても、私は外出させなかった。
案の定、藤原輝美が訪ねてきた。
彼女の香水の匂い、高橋一郎が血を吸う度に私は嗅ぎ取っていた。
彼女の白い首筋を見つめながら、高橋知明が口にしたあの言葉が頭から離れなかった。
血液パック。
そんなにも惜しいの?
高橋知明は藤原輝美が来たのを見て、二階からとんとんと駆け下りて、彼女の胸に飛び込んで甘えた。
「輝美おばさん、この女はひどいの。僕が会いに行くのを許してくれないの。輝美おばさんが僕のお母さんになってくれない?」
彼の無邪気な口調は、まるで剣のように私の心臓を突き刺した。
これは私の息子、十月十日お腹の中で育てた息子。
今は他人を母と呼んでいる。