第16章

私は銀のダガーを収め、付着した血を払い落として鞘に戻した。

二歩先には、負傷して気を失ったヴァンパイアが倒れていた。

ダガーを腰に固定し、特殊なロープを手に取って縛り上げようと近づいた。

近くまで来たとき、その赤い瞳が突然開き、両手が私の首に伸びてきた。

私は準備していたので、素早く空いている手でダガーを抜き、伸びてきた手を激しく刺した。

そのヴァンパイアは痛みの叫び声を上げ、再び気を失った。

私は彼を縛り上げ、助けようとしたものの役に立てなかった高橋一郎の方を見た。

「私はもうあの頃の少女じゃない。あなたの意図的な助けなんて必要ないわ。」

真実に気付いてから、あの森で高橋一郎が私を助けたのは私の血のためだったと分かった。

ヴァンパイアは簡単には赤い瞳を見せない。好みの血を嗅ぎ取るか、感情が大きく揺れる時以外は。