第6章

有給休暇は、もらえるものはもらっておこう。

私はゆっくり起きて、エステに行こうと思っていた。

でも、朝ごはんも食べ終わらないうちに、木村秘書から電話がかかってきて、警察署に保釈に来てほしいと言われた。

時間を計算してみると、外出してから一時間も経たないうちに、河村隆一は自分で警察のお世話になってしまったわけだ。

私はもちろん行きたくなかったけど、向こうはもごもごと言い訳ばかり。そばにいる誰かさんに圧力をかけられているのが丸分かり。

現場に着いて息も整わないうちに、腕に抱きつかれた。

「奥さん、助けて!当て逃げの被害に遭ったんだ!」

190センチ近い大男が、みんなの前で私の腕に抱きついて、首筋に顔を埋めて甘えてきた。

警察官も彼の代わりに恥ずかしくなったようで、咳払いを二回してから口を開いた。