第5章

私が死守していた防衛線は、彼の深い愛情のこもった瞳に触れて、ほんの少しで崩れそうになった。

高層ビルの窓の外で、タイミングよく華やかな花火が打ち上がり、色とりどりの星のように私の注意を全て引き付けた。

「気に入った？君へのプレゼントだよ。高校の卒業パーティーで君が言っていたでしょう。誰かが夜空で星を輝かせてくれたらいいなって。」

男性が後ろから私を抱きしめ、その抱擁は熱かった。

涙が目の前の星々の美しい景色をぼやかし、胸が痛んだ。

美しければ美しいほど、痛みは増していく。

彼とは高校の同級生で、三年間片思いを続けたけれど、卒業時も私には自分の気持ちを伝える勇気がなかった。

だから、政略結婚の相手が彼だと知った時、私は必死に素敵な未来の可能性を掴もうと努力した。

振り向いて彼の目を見つめた瞬間、涙があふれ出した。