第1章

弟の松本光男は携帯を手に持ちながら興奮して言いました。「裏道を見つけたんだ。ここを通れば動物園に直接入れるよ。二千円の入場料が節約できるんだ。」

「月曜日に行けば、人も少ないはずだよ。」

父の松本昇太と母の田中美咲は光男の話を聞いた後、ぼんやりしている私を見つめて言いました。

「弟を見てごらん。頭がいいでしょう。あんなにいい専門学校に合格して、家計のことまで考えてくれて。」

「そうよ。あなたときたら木のようにぼーっとして。弟の話が聞こえなかったの?反応一つないなんて。」

私はようやく我に返り、周りの見慣れた光景を茫然と見回しました。

さっき聞いた話と合わせて、私は確信しました。

私は前世からやり直せることになったのです。

前世では、松本光男は大学入試の成績が出て、両親の期待通り普通の専門学校に合格し、両親は正月のように喜んでいました。

地元の211大学に合格した私が、進学させてほしいとお願いした時の両親の素っ気ない反応とは大違いでした。

「女の子があんなに勉強して何になるの?結局は結婚して子供を産むんでしょう?」

「弟の勉強を見てあげるのが一番大事でしょう!」

「今すぐ就職した方が、光男のためにもっとお金を残せるわよ。」

....

お祝いとして、家族全員で動物園に行くことになりました。松本光男の「偉大な成果」を祝うためです。

本来なら私は含まれていませんでした。入場料が五百円以上もするからです。

でも松本光男がネットで情報を調べていた時、近所の村人が投稿したという記事を見つけました。虎ヶ岳の裏に小道があって、そこから直接動物園に入れる、安全で確実だと書いてありました。

私は危険だと思って、いくつか注意しましたが、田中美咲は私が松本光男の賢さを妬んでいると思い込み、手を上げてきました。