第15章

以前は父を捨てて子を残すのは良いことだと思っていたけど、今では自分が精神的に強くないことがよく分かっている。

この子を産んでも、騙されたことを思い出すだけだろう。

ある晴れた午後、私は縁起の良い日を選んだ。

この子を堕ろすことにした。

トレイの上の小さな塊を見ながら、涙が止まらなかった。

この数ヶ月の妊娠期間は、母親になる喜びを与えてくれたけど、同時に限りない悲しみも与えてくれた。

中絶から回復した後、鈴木望に会いに行った。

鈴木望は私の元通りになったお腹を見て、目に苦痛の色が浮かんだ。

「優ちゃん、私たちにはまだ未来があるの?」

私は首を振って、虚ろな目をした。

「もうないわ。あなたは私を騙した。今でも私に何か感情があるとしても。」

「でも私はまだ思うの。あなたは私に子供を産ませようと騙そうとしていたんじゃないかって。」