第16章 不適切な写真

「もしもし、香織ちゃん、私の話を聞いてる？私の追い打ちが足りなかったの？渡辺家があなたに与えた傷がまだ浅すぎる？」反応がないのを見て、小村明音は急いで問いただした。

「シーッ、ちょっと静かにして。彼らがホテルに入る写真を探してるから邪魔しないで。見つけたわ、今送るわ。もし彼らが世論操作で反撃してきたら、決定的な時に、あなたがこれを公開して」野村香織は冷静に言った。

それを聞いて、小村明音はようやく安心し、携帯を取り出して写真を確認した。しかし一目見ただけで、彼女は怒り出した。

「ふん！最低ね、結婚してるのに浮気するなんて、人間じゃないわ。香織ちゃん、これいつの写真なの？」小村明音は尋ね、心の中で渡辺大輔にクズ男のレッテルを貼った。

「ああ、今年の3月よ」野村香織はため息をつきながら答えた。

小村明音がいなければ、彼女はこの写真を決して取り出すことはなかっただろう。なぜなら、この写真は屈辱を表しているから。写真の中の渡辺大輔と関口美子は二人ともバスローブを着ていて、何も起こらなかったなんて誰が信じるだろうか？

「あなたが尾行して撮ったの？」小村明音は尋ねた。

「そんな趣味ないわ。関口美子が私に送ってきたの。渡辺大輔から離れろって脅すためよ」野村香織は答えた。

当時は我慢したけど、今考えると馬鹿だったわ。不倫相手のくせに、彼女に挑発的な態度を取るなんて、本当に人として見られていなかったんだわ。

「いいわ、不倫相手がそんなに楽しそうなら、すぐに彼女の社会的信用を完全に失墜させてあげましょう」小村明音は怒りに燃えて言った。親友がこんな目に遭わされるなんて、許せなかった。

「好きにやって。私にはお金があるから、彼らと戦える」野村香織の声が聞こえてきた。彼女も悟ったようだ。やるなら大きくやろう。どうせ一人身だし、何も恐れることはない。

「姉さん、私お金ないの、本当に！」小村明音は急いで貧乏アピールをした。世論工作、トレンド入り、ネット工作員の雇用、どれも小さくない出費だった。

「あなたの着てないブランド服、ネットでセカンドハンドとして売れば、お金になるでしょ？」野村香織は笑いを堪えながら言った。

小村明音は顔を曇らせ、抗議した：「香織ちゃん、変わったわね、どんどん悪女になってる！」

野村香織は唇を曲げ、妖艶に言った：「悪女は、みんな大好き。姉さんからのヒントよ、はまり込まないようにね〜」

小村明音：「……」

なぜか、野村香織の妖艶で骨まで染み入るお姉さんボイスを聞いていると、心臓が激しく鼓動し、本当に少しはまりかけているような気がした。どうしよう、オンラインで相談中、急いでます！

野村香織が目を覚ましたとき、すでに午後5時過ぎだった。ベッドに横たわったまま、タブレットを手に取って見始めた。予想通り、関口美子が反撃を始めていた。

お昼を過ぎたころ、関口美子のスタジオが声明を発表した。まず、関口美子と渡辺大輔には不倫関係はなく、渡辺大輔は彼女に撮影技術を相談しただけだと釈明し、次に今日の写真展には野村香織を招待していなかったのに、彼女が自分で来たのであり、別の意図があると疑われると述べた。声明の公表とともに、ネット上の世論の風向きが変わり、多くの人々が態度を変え、矛先を野村香織に向け始めた。

野村香織は冷笑し、携帯を手に取った：「明音さん、あなたの言う通りよ。優しさを見せた方が負けるわ。あの写真を公開していいわ」

「香織ちゃん、安心して。5分後には、ネット上でその写真を見ることができるわ！」小村明音は約束した。

確かに、5分も経たないうちに、ネット上の世論が沸騰した。渡辺大輔と関口美子がバスローブを着ている写真が拡散され、世論は騒然となり、再び渡辺大輔と関口美子を風当たりの強い立場に追い込んだ。

効果が出たのを見て、野村香織はベッドから降り、パジャマ姿のままタンゴを踊りながら歩いた。ロボットの小小は主人が踊るのを見て、自動的に合わせた音楽を流し始めた。

……

嘉星グループの最上階。

秘書の岡山洋子が突然オフィスのドアを押し開け、慌てた表情を見せた。渡辺大輔は眉をひそめた。

「岡山秘書、ノックの仕方を教えないといけないのかな？」渡辺大輔は不機嫌そうに言った。彼はこのような慌てふためいた様子が最も嫌いだった。上に立つ者として、冷静さを保つことは骨の髄まで染みついた習慣だった。

岡山洋子は自分の失態を認識しつつも、説明する余裕はなく、急いで言った：「渡辺社長、大変です。ネット上であなたと関口さんの不適切な写真が流出し、現在世論があなたと嘉星に対して非常に不利な状況です」

渡辺大輔は顔を上げ、いらだたしげに言った：「どんな不適切な写真だ？」

グループの社長として、世論が自分をどう攻撃しようと気にしなくてもいいが、嘉星への影響は見過ごすわけにはいかない。

岡山洋子はタブレットを差し出した。このような事は多く語れず、渡辺大輔自身に見てもらうしかなかった。

ネット上の「不適切な写真」を見て、渡辺大輔は眉をひそめた。写真の内容は確かに暗示的で、彼と関口美子は近い距離にいて、二人とも同じデザインのバスローブを着ていた。アングルから見ると、関口美子の自撮りのようだった。