Y国の国際空港。
機内で、野村香織は流暢な外国語で客室乗務員と冗談を交わし、その後自分の座席に着席した。
窓側のカーテンを引き、香織はイヤホンを付けて音楽を聴き始めた。Y国から国内まで5時間のフライト、美容睡眠を取るつもりだった。
「そこ、座席が間違っていますよ!」突然、冷たい声が響いた。
香織は思わず目を開けると、若々しさと幼さが混ざった顔が彼女を見つめていた。男性は二十歳そこそこで、痩せ型で背が高く、整った顔立ちが独特の美しさを醸し出していたが、全体的な雰囲気は冷たかった。
「まさか……」香織は搭乗券を取り出し、座席番号を確認すると、本当に間違った場所に座っていた。この列は3連席で、彼女の席は真ん中だった。
香織は顔を赤らめ、申し訳なさそうに言った。「すみません、座席を間違えてしまいました。すぐに移動します。」