五時間後、野村香織たち三人は空港を出た。二つのショルダーバッグ以外の荷物は全て森啓次郎に任せた。
「レストランを予約したから、二人を招待するわ」と野村香織は深く息を吸って言った。
「わぁ、香織ちゃん最高!外国の食べ物は全然口に合わなかったの。どこのレストラン予約したの?」食事の話を聞いた小村明音は子供のように喜んで騒いだ。
野村香織は彼女を横目で見て注意した。「大女優さん、勘違いしないでね。私たち二人が食べるの。あなたは見てるだけよ。そのお腹見てみなさい。今月末にバラエティー番組の出演があるでしょう?イメージ大丈夫?」
小村明音は萎えてしまった。美人社長の言葉で、食事の考えは完全に消え去った。仕方がない、芸能人はスタイル管理が必要なのだ。
森啓次郎は大量の荷物を引きながら彼女たちの後ろについて行き、小村明音が元気いっぱいに跳ね回る様子を見て、頭上に黒い線が浮かんだ。クールな女神?どこがだ?
……
ウェスティン・ガーデンにて、二十分後、野村香織たち三人は食事に到着した。パパラッチの撮影を避けるため、野村香織は特に奥まった席を予約したが、彼女と小村明音が予想もしなかったことに、まだ座る前に通路の向こう側に二人の知人を見つけた。
関口美子と渡辺大輔が話をしているのを見て、小村明音は勢いよく問題を起こしに行こうとした。先月の服飾店での出来事が、まだ鮮明に記憶に残っていたからだ。野村香織は彼女を素早く引き止め、余計な事を起こしたくなかった。
「別のレストランに変えない?あの二人を見たら食欲なくなっちゃった」と小村明音は眉をひそめて言った。
野村香織は冷静に言った。「私たちは私たちの食事、向こうは向こうの食事よ。見なければいいだけの話」
ウェイターが去った後、小村明音は不満げな表情で言った。「まさか、香織ちゃん、私たち姉妹なのに、こんな扱いなの?あなたたち二人はステーキに天ぷらなのに、私だけ白菜の湯がいただけ?」
野村香織は冗談めかして言った。「食事させてあげるだけでも十分よ。自分で二キロ太ったことわかってるでしょう?次郎さんと比べないで。彼はまだ若いから体を作らなきゃいけないし、それにまだデビューしてないのよ」
料理が揃うと、三人は食べ始めた。あれだけ長時間フライトに乗っていたので、確かにお腹が空いていた。