野村香織はこのヨットをとても気に入り、自ら「フェアリー号」と名付けた。
名前は少しダサいが、彼女が気に入ったのならそれでよく、星野旭もそれについて特に意見はなく、すぐに登録手続きを手配し、ヨットにペイントを施した。
……
星野旭と別れ、市街地に戻った野村香織は、のんびりと車を運転しながら、自分の誕生日プレゼントを見て、これ以上ない程の幸せな気分だった。
「姉さんはクイーン、自信に輝いて…」と野村香織は歌を口ずさんだ。
別荘の門に着いたところで、小村明音からのメッセージを受け取った:「愛しい香織ちゃん、寂しい?誰かと一緒にいたい?夕方5時、大富豪クラブ、天尊88888号室で、お風呂に入ってあなたを待ってるわよ〜」
野村香織は目を回した。この小村明音は本当に大胆になってきている。もしこのメッセージをスクリーンショットしてネットに投稿したら、彼女のスター生活もここまでだろう。でもこれは、小村明音が彼女を百パーセント信頼している証拠でもあった。
「いいわよ、あなたを天国まで連れて行ってあげるわ」と野村香織は笑いながら返信した。
別荘に戻ると、野村香織はソファに横たわってタブレットを見ていた。渡辺奈美子がまだ命知らずに彼女を中傷し続けているのを発見したが、彼女は笑うだけで無視することにした。この件は既に法的手続きに入っており、渡辺奈美子が今調子に乗れば乗るほど、後で泣くことになるだろう。
意外だったのは、ネット上で渡辺奈美子以外にも、新たな人物が彼女を中傷し始めていたことだ。この人物は彼女と渡辺大輔との離婚以来の出来事について話題を作り、さらには「野村香織は芸能界の人間ではないのに、芸能人よりも有名。絶対に炎上商法で売り出そうとしている」とまで言い出した。
ネット上の騒ぎを暫く見ていた野村香織は、タブレットを脇に置いた。今の人は本当に知能が低い。扇動されるだけでなく、他人の手先になっているとも気付かない。しかし、彼女はこれらを気にも留めず、ベッドで美容睡眠を取った。
数時間後、野村香織は小さな目覚まし時計の音で目を覚ました。鏡に映る現代人の美的基準に完全に合致した可愛らしい顔を見つめ、さらに薄く精巧なメイクを施し、最後に衣装部屋で長時間試着した末、赤い背中開きのVネックロングドレスを着用した。