緑茶室、特別個室。
野村香織が座ってまもなく、ドアが開き、黒いドレスを着た天満玲子が入ってきた。野村香織は急いで迎えに立った。
天満玲子を見て、野村香織は密かに驚いた。間違いなければ、天満玲子はもう六十歳近いはずなのに、その顔には歳月の痕跡が全くなかった。
天満玲子は背が高く、スタイルが良く、三日月のような澄んだ瞳は生き生きとしていた。人生の苦労を感じさせる曇りもなく、老いによる弛緩や肥満も全くなく、春風のような笑顔と優雅な気品だけを漂わせていた。
「あなたが渡辺大輔の元妻の野村香織?噂のサマーさん?」二人が席に着くと、天満玲子が先に口を開いた。
自分のことが天満玲子に知られていることを悟り、野村香織は素直に認めた。「天満社長、私がサマーの野村香織です。ですが、噂なんてとんでもありません。社長の前では、私なんて小物です。」