第69章 協力関係を結ぶ

オフィスの雰囲気は緊張していた。三人とも誰も話さず、柴田貴史は笑顔を浮かべていたが、心の中では極度に居心地が悪かった。野村香織はソファに座り、頭を上げず目を開けずに携帯をいじっていて、渡辺大輔を全く見ようとしなかった。

なぜか柴田貴史と野村香織が同じソファに座っているのを見ると、渡辺大輔の心は不快だった。本来ならこの時間に重要な内部会議を開く予定だったが、朝にトレンド入りを見てから会議を延期し、購買マネージャーに代わって自ら来たのだった。

彼が調べたところ、事態は柴田貴史が言うようなものではなかった。確かに彼は若手実業家だが、彼の周りには女性はおらず、昨日錦都から戻ってきたばかりで、すぐに野村香織をランチに誘ったのだ。純粋な賞賛だとか、幼なじみだとかいうのは、全て野村香織への好意を隠すための言い訳に過ぎなかった。