第70章 あなたに関係ある?

「時間がない!」渡辺大輔は無表情で拒否し、両手をポケットに入れて立ち去った。

岡山洋子は困った表情で言った。「申し訳ありません、柴田社長。うちの社長は最近体調を崩していて、そのため機嫌が悪いんです。契約は成立していますので、当社は契約通りに支払いを行います。両社の協力関係が良好なものとなることを願っています。」

そう言うと、彼女は柴田貴史に申し訳なさそうに微笑みかけ、書類カバンを持って急いで立ち去った。今日の渡辺大輔と柴田貴史の対面で、岡山洋子は自分の上司が見劣りすると感じた。品格も、話し方や振る舞いも、ビジネスマナーも、柴田貴史の方が渡辺大輔を上回っていた。

エレベーターの中で、渡辺大輔は突然尋ねた。「君も柴田貴史のことを気に入っているのか?」

岡山洋子は一瞬戸惑い、渡辺大輔の冷たい視線に向かって答えた。「冗談でしょう、社長。私は柴田社長とは一度お会いしただけで、全く存じ上げません。どうして気に入るなんてことがありましょうか。」

渡辺大輔は冷ややかに言った。「では、私と彼とどちらが優秀だと思う?」

岡山洋子はまた戸惑い、とても奇妙な目で渡辺大輔を見つめた。今日は何かおかしいのかと思いながらも、唇を噛んで答えた。「柴田社長は若くて有能で、人当たりも良いですが、社長とは比べものになりません。」

渡辺大輔は眉を上げて言った。「いつから御世辞を言うようになった?」

岡山洋子は「……」

この言葉は多少大げさかもしれないが、心からの言葉だった。彼女は長年渡辺大輔の側で働き、彼の能力をよく知っていた。よく人は渡辺大輔は運が良いだけだ、生まれた時から金の匙をくわえていたと言うが、岡山洋子はそうは思わなかった。

裕福な家庭に生まれた人が皆才能があるわけではないし、全ての二世が社会で頭角を現し、一人前になれるわけでもない。

嘉星グループの発展を確固たるものにするため、渡辺大輔はここ数年多大な努力を重ねてきた。しばしば一人で会社に残り、夜遅くまで仕事をすることもあった。嘉星の業績も毎年新記録を更新し、かつて嘉星と肩を並べていた企業は既に姿を消し、嘉星だけが発展を続けている。これだけでも渡辺大輔が優秀であることの証明になっていた。