「ダメよ、前に調べてって言われたことが分かったわ。やっぱり関口美子が裏で悪さをしていたのよ」と小村明音は報告した。
野村香織は冷ややかに鼻を鳴らした。「やっぱり彼女だったわね!」
小村明音は興味深そうに尋ねた。「香織ちゃん、正直に言いなさいよ。今夜渡辺家に行ったのは何のため?懐かしい場所を訪れて、景色は変わってなかった?」
野村香織は軽く唾を吐くように言った。「ふん!何が景色よ。私は物を取りに行っただけよ。渡辺奈美子が私の大学の卒業写真を隠したの。渡辺大輔が教えてくれなかったら、まだ分からなかったわ」
「マジかよ!高価な物がたくさんあるのに、一枚の写真、それも卒業写真を盗むなんて、渡辺奈美子は何をするつもりなの?」小村明音は思わず乱暴な言葉を吐いた。
野村香織は無関心そうに言った。「知るもんか。でも絶対に良からぬことを企んでいるわね。今日お兄さんに面と向かって叱られたから、何かしようと思っても結果を考えるでしょうけど」
さっき渡辺大輔が彼女のために立ち向かい、スムーズに物を取り返させてくれたことを思い出し、野村香織は信じられない気持ちになった。あの鈍感な男が彼女のことを気にかけるなんて、本当に珍しいことだった。
「これからは渡辺家に行かない方がいいわ。あなたが渡辺家を出たとたん、トレンド入りしちゃったのよ。幸い柴田貴史があなたのイメージを挽回してくれたけど、そうでなければネットユーザーにどんな風に叩かれていたか分からないわ」と小村明音は言った。
野村香織は眉を上げ、自分はトレンド体質なのかもしれないと感じた。何をしてもトレンド入りしてしまう。ネットユーザーが賢くなって、簡単には扇動されなくなっていなければ、今頃ネット上はどんなことになっていたか分からない。
「褒めないといけないわね、トレンドの削除がとても早かったわ。かなりお金がかかったでしょう?」野村香織は演技するように言った。
電話の向こうで、小村明音は数秒間呆然とした。「え?私は削除依頼してないわよ。あなたがPR会社に頼んだんじゃないの?」
野村香織:「……」
瞬時に、二人とも事情を理解した。結局、お互いが相手が削除したと思っていたが、実際には二人とも何もしていなかった。トレンドが自然に下がったということ?