第64章 渡辺大翔

「はい、三日間付き合ってあげたわ。これ、あなたの彼氏が私に頼んで渡してって言ってたの」野村香織は笑いながら言って、バッグを小村明音に手渡した。

撮影現場で三日間過ごしたことは、自分に三日間の休暇を与えたようなものだった。今朝も錦都に行ってきた。旭テクノロジー株式会社がそこで上場することになり、彼女と柴田貴史が最大の古株主だったため、会社の幹部たちの面子を立てるために顔を出す必要があった。

上場セレモニーが終わった後、退屈になったので柴田貴史に応酬を任せ、彼女は柴田貴史から頼まれたルイ・ヴィトンのバッグを小村明音に届けることにした。

小村明音は手にしたバッグを嬉しそうに見つめ、小さな顔に幸せそうな赤みが浮かんだ。野村香織も彼女のために喜んだ。柴田貴史は本当に彼女に良くしてくれている。