彼女に話を終わらせる機会を与えず、野村香織は電話を切り、携帯を脇に投げ、ベッドに倒れ込んで休んだ。
……
翌日午前8時。
野村香織が目を覚ましたところに、斎藤雪子から電話がかかってきた。「野村社長、大和の会長があなたとお会いしたいそうです。」
「大和?それって関口美子のお父さん、関口勇じゃない?」野村香織は驚いて言った。
斎藤雪子は確認した。「はい、その通りです。関口勇さんです。あなたとお会いしたいとのことで、時間と場所はあなたの都合に合わせるそうです。話の様子では、株式を手放す意向もあるようです。」
野村香織は唇の端を上げ、急に興味を示した。また数十億円が自分に向かって手を振っているような気がして、こう指示した。「それなら、会ってみましょう。」
斎藤雪子は恭しく答えた。「かしこまりました。具体的な時間と場所を調整させていただきます。後ほど詳細をお送りいたします。」