第81章 渡辺大輔、お前はまだ人間か？

彼も部屋に入りたがっているのを聞いて、野村香織は眉を上げ、冷たく言った。「渡辺社長、私たちはもう離婚しましたから、男女二人きりで部屋にいるのは誤解を招きます。用件があるなら、ここで話しましょう」

渡辺大輔は表情が暗くなり、重々しく言った。「そんなに私が嫌いなのか？」

野村香織は軽く笑い、唇の端を上げながら言った。「渡辺社長、誤解されています。私が入れないのは、誰かに盗撮されるのを避けたいからです。もし渡辺社長が私と一緒にトレンド入りしたいなら別ですが」

渡辺大輔は返す言葉もなく、表情がさらに険しくなり、冷たく言った。「渡辺奈美子の件については、ネット上で公開謝罪文を出させます」

野村香織は尋ねた。「それで？」

「訴えを取り下げて、今回は許してやってほしい」と渡辺大輔は言った。

これを聞いて、野村香織は心の中で納得した。これが今夜、渡辺大輔がわざわざ彼女を訪ねてきた目的だったのだ。やはり同じ渡辺の姓を持つ以上、いざという時は厄介者の妹を守るのだ。

野村香織は彼を冷ややかに見つめ、意味深な口調で言った。「渡辺社長のおっしゃりたいことは分かりました。話が終わりでしたら、お帰りください」

渡辺社長は無意識に頷いたが、すぐに首を振り、目を見開いて言った。「その言い方はどういう意味だ？」

実は彼は野村香織を訪ねるつもりも、渡辺奈美子のために頼むつもりもなかった。しかし、昼間の岡山洋子の言葉が気になり、帰宅途中で思わずここに来てしまったのだ。だが野村香織に用件を聞かれて、何もないとは言えず、急いで渡辺奈美子の件を思いついたのだった。

「渡辺大輔、あなたはまだ人間なの？」野村香織は奥歯を噛みしめながら罵った。「人間なら、絶対に私の家の前まで来てこんな話をしないはず。離婚の日に岡山洋子を通じて伝えたでしょう。これからは他人同士、あなたは陽の道を行き、私は細い橋を渡る。あなたの周りの人々をちゃんと管理して。私を怒らせたら、後悔することになるわよ。私が冗談を言っているとでも思っているの？」

言い終わると、野村香織は男を冷たく睨みつけ、すぐにドアを開けて別荘に入り、男に話す機会を全く与えなかった。