第82章 関口さんのセンスは良くない

先ほどの青木翔の行動から、渡辺大輔はもう来ないだろうと分かった。そうでなければ、あんなに早く電話を切るはずがない。誰も彼女を助けに来ないなら、自分で火遊びをしているようなものではないか?

「離して、トイレに行きたいの」関口美子は抵抗しながら言った。

俊治兄と呼ばれる男は口を歪めて笑った。「俺が付き添ってやるよ。ちょうどトイレでの騎馬戦なんてまだ試したことがないからな、ハハハ……」

関口美子は目を動かし、素直に頷いた。「いいわ。でも先に手を離して」

俊治兄はそれを聞くと、大きな手を離した。ここは自分のテリトリーだ。関口美子に一分先に逃げ出させても、逃げられるはずがない。

二人はトイレに向かって歩き始めた。俊治兄は関口美子のしなやかな体つきと白い肌を見つめ、股間のテントは高く盛り上がり、今すぐにでも彼女を押し倒したい衝動に駆られた。

「あら、青木様。こんな偶然、ゴジラバーにいらっしゃるなんて」カウンターを通り過ぎる時、関口美子は驚いたふりをして青木翔に挨拶した。

ネオンの光の中、青木翔は白いスーツを着て、胸にバラの花を挿し、まるで金持ちの坊ちゃんのような雰囲気を醸し出していた。関口美子の挨拶を聞くと、グラスを持ちながら言った。「ふん、偶然かどうかは知らないが、関口さんの趣味は良くないようだね」

そう言って、わざと俊治兄を一瞥した。彼の顔は笑っていたが、目には軽蔑の色が満ちていた。

俊治兄は顔色を変え、関口美子を見て、また青木翔を見た。まさか二人が知り合いだとは。長年バーで過ごしてきた経験から、青木翔は自分が手を出せる相手ではないと判断し、未練がましく関口美子の尻を一目見てから、こそこそと立ち去った。

関口美子の顔は恥ずかしさで一杯だった。何か弁解したかったが、何も言葉が出てこず、ただ歯を食いしばるしかなかった。

そのとき、同じくスーツをビシッと着こなした川井遥香が近づいてきた。彼はトイレから戻ってきたところで、関口美子がいるのを見つけて不思議に思ったが、青木翔が目配せしたので何も聞かずに、グラスの酒を飲み干すと、二人でバーの外に向かった。

関口美子は彼らの後ろについて行き、俊治兄にまた絡まれないように気をつけた。やっと外に出ると、彼女の心はようやく落ち着いた。