第89章 さらにもっとうるさい奴が来た

野村香織は、宣伝パンフレットの少なくとも3分の2が川井家の宣伝であることに気づいた。もっとも、川井家がこの夜会の最大の投資家であり、川井家傘下の清正エンタメ株式会社がエンターテインメント業界の半分を占めているため、主催者が川井家を大々的に宣伝するのも当然だと理解できた。

野村香織がパンフレットを見ていると、会場に長身の人影が現れた。渡辺大輔の親友である青木翔だった。彼が入ってくると、多くのスターが彼に挨拶を送った。

「ちょっと来てくれ」青木翔はスタッフの一人に手を振った。

青木様が声をかけると、そのスタッフは急いで駆け寄り、恭しく言った。「青木社長、ご用件は?」

「主催者側は何をしているんだ?最前列の中央席は誰でも座れるのか?」青木翔は近くにいる野村香織を指差し、不機嫌そうに言った。