第84章 戦衣

関口勇は呆気に取られた。野村香織はさっさと立ち去り、少しの躊躇もなかった。ドアの前まで来ると、何か思い出したように振り返って関口勇に言った。「そうそう、忘れるところだった。あなたの妹の関口美子さん、最近桃花運が良いみたいね。でも、みんなろくでもない縁だわ。関口さんのことをもっと理解したほうがいいわよ。間違った道を選んでしまったら、後悔しても取り返しがつかないわ」

言い終わると、もう留まることなくドアを開けて出て行った。すると、誰かの体にぶつかってしまった。正確に言えば、誰かの胸にぶつかったのだ。

野村香織はよろめき、額を擦りながら見上げると、渡辺大輔が氷のような表情で立っていた。野村香織は彼を白い目で見て、頭を擦りながら立ち去った。岡山洋子はブリーフケースを持って彼女の後を追った。