第101章 汚い言葉を使わずに罵る

柴田貴史は肩をすくめて言った。「私は野村香織のことをよく知っているから、彼女なりの考えがあるはずだよ」

小村明音は口をとがらせた。「どんな考えよ。杉村俊二が香織を見る目つきが怪しいわ。さっき香織が歌を歌ってた時なんて、香織ちゃんをじっと見つめてたのよ」

柴田貴史は苦笑いを浮かべた。「杉村さんも自分なりの思いがあるってことだな」

小村明音は大きな瞳をくるくると回しながら、親友の野村香織があまりにも優秀すぎて、ステージで歌を一曲歌っただけで杉村俊二のようなイケメンの心を捕らえてしまうことを考えていた。

……

宴会場の外。

野村香織は足を止めた。まだ完全に外に出る前に、渡辺大輔がポケットに両手を入れて、氷のような表情で彼女を見つめているのに気付いた。

野村香織は眉を上げた。前回二人が不愉快な別れ方をしてから、しばらく会っていなかった。今、彼が入り口で待ち構えているのを見ても、挨拶をする気にはなれなかった。別れは別れ、未練がましくする必要はない。野村香織はそれほど単純だった。