三人は幼なじみで、柴田貴史がどんな人柄なのか、彼女はよく分かっていた。小村明音が彼と結ばれることで、きっと幸せな生活を送れるだろうと、心から嬉しく思っていた。
もちろん、柴田貴史のことをよく知っているからこそ、彼が理由もなく自分に電話をかけてくることはないと分かっていた。相談に乗って欲しいというのは、きっと何か困ったことがあるに違いない。
電話の向こうで、しばらく沈黙が続いた後、柴田貴史は口を開いた。「結婚には、家と大きなダイヤの指輪が必要なんだ。」
「ふ~ん」野村香織は長く声を引き伸ばした。
家という言葉を聞いて、以前小村明音が打ち明けてくれた話を思い出した。明音はここ2年間、必死に撮影の仕事をこなして貯金をしていた。それは二人の新居を買うため、柴田貴史にサプライズを贈りたいと思っていたからだ。