芸能界にいる青木翔は、このようなゴシップニュースをあまり信じていなかった。彼の知る限り、柴田貴史は渡辺大輔によく似た人物で、どちらも典型的なワーカホリックで、一分一秒でも机に向かっていたいタイプだった。柴田貴史は起業してからこれまで、恋人はおろか、恋愛すら一度もしたことがなかったため、彼は柴田貴史と野村香織の間に何か怪しい関係があるとは全く信じていなかった。
しかし、今、自分の目で見て、耳で聞いて、青木翔は心の中で叫んだ。「くそっ!俺の目は節穴だったのか……」
ある種の効率とは、人の恋愛を知らないうちに、その人がすでに新居まで購入しているということだ。これでも恋愛と言えないのなら、子供ができてからでないと恋愛とは言えないのだろうか?
分譲センターを出て、青木翔は携帯を取り出し、すぐに渡辺大輔に電話をかけた。渡辺大輔の親友として、彼らは少なくとも30年の付き合いがあった。離婚してから、渡辺大輔の変化を全て見てきた彼は、離婚が影響を与えていないなんて、死んでも信じられなかった。
渡辺大輔に聞かなくても、この親友が何を考えているかはよく分かっていた。もし誰かが離婚を後悔しているとすれば、それは間違いなく渡辺大輔だろう。これさえ分からないのなら、渡辺大輔の兄弟を名乗る資格もない。
改心は金にも替えがたいが、渡辺大輔が今更後悔しても遅すぎるようだ。野村香織はすでに次の相手を見つけ、家まで購入している。一旦、家に野村香織の名前が記載されれば、もう渡辺大輔の出る幕はなくなる。
……
嘉星グループ、マルチメディア会議室。
年末年始、嘉星グループの社長として、彼の忙しさは幾何級数的に増加していた。これは今月だけで百十三回目の会議だった。
「ブルル……」テーブルの上の携帯が振動した。
渡辺大輔は話の最中、携帯をちらりと見て、青木翔からの着信だと分かると、躊躇なく電話を切った。この親友のことを心から呆れていた。もう四十歳近いのに、まだ子供のように毎日を過ごし、些細なことでも電話をかけてくる。