第123章 なぜここにいるの?

離婚後、このドレスを捨てようと思ったけど、結局我慢した。渡辺大輔への未練があったわけじゃない。このドレスで自分に言い聞かせたかったの。もう二度と、勝手な思い込みをする馬鹿な女にはならないって。

彼女が物思いに沈んでいるのを見て、小村明音は戸惑いながら声をかけた。「ねぇ、何考えてるの?」

野村香織は回想から我に返り、軽く微笑んだ。「なんでもないわ。今夜ロブスター以外に何を食べようかなって考えてただけ」

ベッドの上のハイヒール、野村香織はその場でくるりと一回転した。香りが漂い、優美で魅力的で、特にその絶世の美貌は、こんな素敵なドレスはもちろん、布切れ一枚でも普通の人より綺麗に見えるほどだった。

「きゃー!香織ちゃん、私、時々男になりたいって思うの。そうしたら香織ちゃんを口説けるのに」小村明音は興奮して足踏みをし、大きな瞳は緑色に輝き、まるで野村香織を一口で食べてしまいそうな勢いだった。