第123章 なぜここにいるの?

離婚後、このドレスを捨てようと思ったけど、結局我慢した。渡辺大輔への未練があったわけじゃない。このドレスで自分に言い聞かせたかったの。もう二度と、勝手な思い込みをする馬鹿な女にはならないって。

彼女が物思いに沈んでいるのを見て、小村明音は戸惑いながら声をかけた。「ねぇ、何考えてるの?」

野村香織は回想から我に返り、軽く微笑んだ。「なんでもないわ。今夜ロブスター以外に何を食べようかなって考えてただけ」

ベッドの上のハイヒール、野村香織はその場でくるりと一回転した。香りが漂い、優美で魅力的で、特にその絶世の美貌は、こんな素敵なドレスはもちろん、布切れ一枚でも普通の人より綺麗に見えるほどだった。

「きゃー!香織ちゃん、私、時々男になりたいって思うの。そうしたら香織ちゃんを口説けるのに」小村明音は興奮して足踏みをし、大きな瞳は緑色に輝き、まるで野村香織を一口で食べてしまいそうな勢いだった。

また不真面目になり始めた彼女を見て、野村香織は眉を上げた。「よだれ拭きなさいよ。このまま外に出たら、口が凍っちゃうわよ」

小村明音は人気女優で、常に高品質な生活を送っていたため、いつでもどこでも綺麗に装うという習慣が身についていた。顔のメイクは自然で飽きの来ないものだった。

「ほら、アイシャドウを直しましょう」野村香織は化粧品を取り出して言った。

小村明音は何も言わず、鏡を見ながら素早くアイシャドウを塗り直すと、二人で別荘を出た。道中、小村明音は痴漢のような真似を楽しみ、小さな手を野村香織の細い腰とお尻の間で行ったり来たりさせていた。

野村香織は小村明音の拙い演技を静かに見つめていた。彼女の奇妙な視線の下で、小村明音はようやくセクハラをやめ、野村香織の腕に寄り添って甘えた。

……

40分後、ゴルデンホテル。

ホテルに入る直前、野村香織は特に振り返って小村明音の顔を確認し、メイクに問題がないことを確認してから、安心して彼女を連れてホテルに入った。

彼女たちがホテルに到着したのは、ちょうど夜の7時だった。外は暗くて手を伸ばしても五指が見えないほどで、二人はエレベーターに乗ってゴルデンホテルの最上階へ直行した。