第122話 思い出のドレス

小村明音は慌てて言った。「違うの、そういう意味じゃないの。私は...安心して、あんな嫌な男たちと比べたら、あなたが一番大好きよ。誰もあなたの私の心の中での位置を代われないわ。」

「まあ、蜜を塗ったみたいに甘い言葉ね。信じると思う?」野村香織は薄紅の唇を緩やかに曲げ、からかうような表情で小村明音を見つめた。

小村明音は不機嫌そうに言った。「今日は気分が悪いの。で、どこで食事するつもり?」

「せっかくの時間だから、いい所に連れて行かなきゃね。ゴルデンホテルにしましょう。あそこのロブスターが美味しいって聞いたわ」野村香織は考えるふりをして言った。

社長が高級ロブスターを奢ってくれると聞いて、小村明音は鳥のように頷き、今すぐにでも食べ始めたい様子だった。ただし、出発前に大量のさくらんぼを持ち帰った。

「香織ちゃん、このさくらんぼ美味しいわね。どこで買ったの?」小村明音は尋ねた。

「買ったんじゃないの。隣の人が持ってきてくれたの。友達が海外から持ち帰ったものだって」野村香織は答えた。

突然、小村明音は野村香織の顔の前に顔を寄せ、ゴシップ好きな魂が燃え上がるような様子で言った。「おや、私が数日いない間に新しい恋人ができたの?早く教えて、どこまで進展してるの?」

野村香織は呆れて、指で小村明音の額を押し、力を込めて押しのけた。「あなたの頭の中は何で一杯なの?ただの普通の隣人よ。彼がさくらんぼをくれたから、私は文旦を返したの。お互い様で借りも貸しもないわ。」

そう言って、クローゼットに向かった。小村明音はソファに座って次々とさくらんぼを食べ、食いしん坊という文字が顔に書かれているようだった。

「そうそう香織ちゃん、絶対可愛く着飾ってね。今夜は年越しだから、イケメンに出会えるかもしれないわよ」小村明音は大声で言った。

野村香織は足を止め、不機嫌そうに振り返って彼女を睨んだ。「いつもイケメンのことばかり考えて、彼氏が嫉妬するわよ」

普通の年越しは十二月三十一日だが、彼女たちは違った。数日前に年越しを祝うのだ。なぜなら、本当の年越しの時期になると、小村明音のようなトップスターは、次々と年末特番の仕事が入り、年越しを祝う時間がないからだ。

...

クローゼットにて。