第116章 あなたは面倒に巻き込まれたようね

渡辺奈美子は青い髪の女の子と一緒にエレベーターを出て、野村香織を見かけると表情が凍りついた。前回の裁判以来、渡辺奈美子はしばらく野村香織に嫌がらせをする勇気がなくなっていた。以前なら、お嬢様然とした態度で野村香織に言葉で攻撃を仕掛けていただろう。

風水は巡るもので、今の渡辺奈美子は野村香織を見かけると避けて通りたいほどだった。彼女は認めざるを得なかった。野村香織は法的手段で彼女に非常に生々しい教訓を与え、野村香織の手段がいかに厳しいものかを思い知らされたのだ。

渡辺奈美子が友達を引っ張って恐る恐る立ち去る様子を見て、野村香織は口角を少し上げた。人というのはそういうものだ。優しく接すると付け上がり、厳しく懲らしめてはじめて自分の立場を知るのだ。

渡辺奈美子が問題を起こさないなら、野村香織も関わる気はなかった。バッグを持ってそのままエレベーターに乗り込んだ。世界は本当に狭いと感じた。どこに行っても「知り合い」に出会うものだ。