ドアベルの音を聞いて、野村香織は眉をひそめた。まさか渡辺大輔がまた来たのだろうか?
ドアベルが3回鳴るのを待って、彼女はようやく玄関のモニターを見に立ち上がった。すると、爽やかなイケメンの顔が映っていた。杉村俊二が花束を抱えて門の前に立っていたので、急いで靴を履いて外に出た。
門の前に来ると、野村香織は尋ねた。「まさか、インターネット料金をまだ払っていないとは言わないでしょうね。」
「野村さん、冗談を言わないでください。前回は本当に失礼しました。ご心配をおかけしましたが、うちのインターネットは正常に復旧しましたし、しかも光ギガビットを導入して、速度は驚くほど速いんですよ。」杉村俊二は笑いながら言った。
野村香織は尋ねた。「で、何の用事?」
「実は大したことじゃないんです。友人が海外から帰ってきて、チェリーを2箱持ってきたんですが、私一人では食べきれないし、ちょうど通りかかったので、お持ちしました。」杉村俊二は助手席に置いてある白い箱を指さした。
チェリーなんて食べたくもない野村香織は断ろうとしたが、杉村俊二はチェリーを差し出し、顔には輝くような誠実な笑顔を浮かべていた。
「それじゃあ、ありがとうございます。」野村香織は贈り物を受け取った。笑顔で接してくれる人を拒むのは良くないし、相手がこれほど親切で礼儀正しいのに、断るのは人情に欠けると思った。
杉村俊二は笑って言った。「気にしないでください。チェリー1箱くらい。私たちは隣人なんですから、もっと付き合いを深めて、お互いに助け合うべきですよ。」
「せっかくですから、家に上がってお茶でもどうですか。」野村香織は門を開けて招待した。
杉村俊二は率先してチェリーの箱を別荘に運び込み、さらに花束を客間の花瓶に活けた。これで野村香織が考えていた花を断る理由は全て使えなくなってしまった。
二人がソファに座ると、野村香織はリンゴを一つ取って杉村俊二に渡した。「これを試してみてください。今朝河東に空輸されたばかりの輸入クリスタルフジです。蜜入りで、甘くてシャキシャキしていますよ。」
お返しとして、彼女は杉村俊二のために特別な贈り物を用意する気はなかったが、今朝買ってきたばかりのリンゴでお返しすることにした。チェリーとリンゴでは価格が釣り合わないかもしれないが、気持ちということで。