野村香織は食べ物の入った袋を受け取って言った。「私も庶民の味が好きなの」
二人は別荘に入り、杉村俊二を直接食堂へ案内した。そして野村香織はキッチンへ行って食器を取りに行った。「そうそう、昨日作った氷砂糖とサンザシのコンポートがあるわ。食欲をそそると思うから、試してみない?」
言い終わらないうちに、冷蔵庫から一杯取り出して杉村俊二に渡した。このコンポートは昨日彼女が自分で作ったもので、弱火で3、4時間かけて煮込んだものだった。
杉村俊二は小鉢を受け取って「ありがとう。ちょうど最近食欲があまりないんだ」
コンポートを脇に置くと、彼は袋を開け始め、香ばしい串焼きを一つずつ皿に並べていった。たちまち食堂全体が食欲をそそる香りで満たされた。
野村香織は密かに頷いた。杉村俊二は細かい気配りができる人だ。焼き物は冷めやすいものなので、特に保温アルミホイルで包んでもらっていた。この包装方法は余分にお金がかかるが、保温効果は抜群だ。15分の距離があったにもかかわらず、保温アルミホイルを開けると、串焼きから湯気が立ち上っていた。