野村香織は食べ物の入った袋を受け取って言った。「私も庶民の味が好きなの」
二人は別荘に入り、杉村俊二を直接食堂へ案内した。そして野村香織はキッチンへ行って食器を取りに行った。「そうそう、昨日作った氷砂糖とサンザシのコンポートがあるわ。食欲をそそると思うから、試してみない?」
言い終わらないうちに、冷蔵庫から一杯取り出して杉村俊二に渡した。このコンポートは昨日彼女が自分で作ったもので、弱火で3、4時間かけて煮込んだものだった。
杉村俊二は小鉢を受け取って「ありがとう。ちょうど最近食欲があまりないんだ」
コンポートを脇に置くと、彼は袋を開け始め、香ばしい串焼きを一つずつ皿に並べていった。たちまち食堂全体が食欲をそそる香りで満たされた。
野村香織は密かに頷いた。杉村俊二は細かい気配りができる人だ。焼き物は冷めやすいものなので、特に保温アルミホイルで包んでもらっていた。この包装方法は余分にお金がかかるが、保温効果は抜群だ。15分の距離があったにもかかわらず、保温アルミホイルを開けると、串焼きから湯気が立ち上っていた。
野村香織は鼻を鳴らして言った。「本当に美味しそう。今月までで、焼き物を食べていないのはもう4年くらいになるわ。もう味も忘れかけていたわ」
杉村俊二はコンポートを一口味わって言った。「じゃあ、早く食べましょう。屋台の食べ物なんて好きじゃないかと心配していたんだ」
野村香織は軽く微笑んで「私だって仙人じゃないわ。美味しいものは好きよ。そうそう、ここにそば茶もあるわ。脂っこさを消すのにぴったりよ」
杉村俊二は羊肉の串を一口かじり、満足げな表情を浮かべた。「遠慮なく食べましょう。早いうちに食べないと。この屋台の味、想像以上に美味しいね」
野村香織は頷き、もう話すのを止めた。左手に羊肉の串、右手にエノキ茸の串を持って、小さな口で食べ始めた。耳元から垂れた数本の髪が、女性らしい雰囲気を醸し出していた。
串を置いて、野村香織は牛肉の串を取りながら言った。「あっ、そうだ。冷蔵庫にビールがあるわ。飲む?」
杉村俊二は首を振った。「僕は普段お酒は飲まないんだ。そばちゃで十分」
野村香織は目を瞬かせて「お酒を飲まない男性って珍しいわね」