二人の女性が立ち上がると、傍らの青木翔も立ち上がった。「僕も一緒に行きたいな。何度も来たことはあるけど、ちゃんと見て回ったことがないんだ」
彼も行くと聞いて、天満奈津子は不機嫌な顔で言った。「お兄さん、さっき食事の時に会社の用事があって戻らないといけないって言ってたじゃない?今は大丈夫なの?」
青木翔は首を傾げて「祝日だから、用事は明日でいいよ」
天満奈津子「……」
野村香織は微笑みながら青木翔を見た。青木翔は慌てて顔をそらし、彼女の視線を見なかったふりをした。彼は野村香織の目を見る勇気がなかった。その目には恋の色が漂っていて、見つめられると恋の渦に巻き込まれそうだった。
仕方なく、天満奈津子は二人を連れて敷地内を案内することにした。歩きながら野村香織をどうやって懲らしめようか考えていたが、しばらく考えても良い考えは浮かばなかった。最後に一行は敷地内の収蔵室へ向かった。そこには国内外の有名な書画や、特別な骨董品が数多く展示されていた。