第138章 悪人が先に告げ口をする

少し考えてから、野村香織はその場所に歩み寄り、天満奈津子が先ほど立っていた場所に立って写真を撮り始めた。野村香織は眉を上げ、天満奈津子の言う通り、この位置から撮った写真の効果は確かに良く、芸術的な雰囲気が漂っていた。

突然、彼女が撮ったばかりの写真を見ていると、背後から強い力が襲ってきた。彼女の頭脳は素早く反応し、天満奈津子が仕掛けたことを理解したが、避けることはせず、むしろ流れに身を任せて、その透かし彫りの回転花瓶に向かって倒れ込んだ。

「ガシャン!」という鋭い音が響き、透かし彫りの回転花瓶は床に落ちて粉々に砕けた。

故意とはいえ、花瓶が置かれていた台に体をぶつけたため、腕が痛んだ。青木翔は呆然としていた。彼は全ての過程を目撃し、天満奈津子が狂ったのではないかと感じた。記憶が正しければ、この回転花瓶は義理の叔父が海外で長い時間をかけて購入したもので、宝物のように大切にし、仏間に飾るほど珍重していた骨董品だった。