第138章 悪人が先に告げ口をする

少し考えてから、野村香織はその場所に歩み寄り、天満奈津子が先ほど立っていた場所に立って写真を撮り始めた。野村香織は眉を上げ、天満奈津子の言う通り、この位置から撮った写真の効果は確かに良く、芸術的な雰囲気が漂っていた。

突然、彼女が撮ったばかりの写真を見ていると、背後から強い力が襲ってきた。彼女の頭脳は素早く反応し、天満奈津子が仕掛けたことを理解したが、避けることはせず、むしろ流れに身を任せて、その透かし彫りの回転花瓶に向かって倒れ込んだ。

「ガシャン!」という鋭い音が響き、透かし彫りの回転花瓶は床に落ちて粉々に砕けた。

故意とはいえ、花瓶が置かれていた台に体をぶつけたため、腕が痛んだ。青木翔は呆然としていた。彼は全ての過程を目撃し、天満奈津子が狂ったのではないかと感じた。記憶が正しければ、この回転花瓶は義理の叔父が海外で長い時間をかけて購入したもので、宝物のように大切にし、仏間に飾るほど珍重していた骨董品だった。

「まあ!野村香織、何てことするの?写真を撮るだけなのに、物を壊すなんて!」天満奈津子は大声で叫び、野村香織を指差しながら目を剥いて怒りの表情を浮かべた。

そう、彼女は意図的に野村香織を陥れようとしていたのだ。ここには三人しかおらず、青木翔は彼女の従兄だから、当然彼女の味方をするはずだった。

天満奈津子が先に被害者を演じるのを見て、野村香織は口角を上げたまま微笑んでいた。実は彼女は早くから天満奈津子の策略を見抜いていた。このような古臭い嵌め技は、様々なドラマでも使い古されていた。

野村香織は彼女を無視し、代わりに周囲を見回した。部屋の隅に監視カメラを発見したが、すぐに眉をひそめた。というのも、このカメラの角度では天満奈津子が彼女を押した場面は映っておらず、彼女がよろめいて回転花瓶にぶつかる場面しか映っていないようだった。天満奈津子は本当に周到で、この点まで計算に入れていたようだ。

「ねえ、あなたに話しかけているのよ。そんな知らんぷりをしないで。」

「黙っていれば済むと思わないでよ。この透かし彫りの回転花瓶は私の父の一番のお気に入りなの。後で父にどう説明するつもりなの。」

「ふん、美人は災いの元ね。あなたは狐狸精よ。前は渡辺大輔に取り入って三年も奥さんだったのに、結局蹴られて。今度は俊二兄に近づこうなんて、本当に恥知らずね。」