第143章 損して得とれず

野村香織は唇の端を上げ、まったく気にしない様子で言った。「謝る必要はないわ。だって、あなたの義理の母の家は今夜、きっと大変なことになるでしょうから。そして、それは全て私のせいだから」

彼女が気にしていない様子を見て、杉村俊二の心の中の謝罪の気持ちは半分以上消えた。「そうですね。どちらにしても、私たちが正しい側なんです。正直、天満奈津子があなたにそんなことをするとは思いませんでした」

野村香織はバッグを手に取った。「私は彼女のことなんて全く気にしていないわ。でも、あなたの義理の妹は今夜、きっと叱られることになるでしょうね」

杉村俊二は肩をすくめた。「仕方ないですよ。誰でも自分の行動には責任を取らなければならないんです」

野村香織は頷いた。「その通りよ。送ってくれてありがとう。おやすみなさい」