第151章 恨みはその場で返す

「初めてなので、案内してもらえますか」と野村香織は言った。

彼女は自分の評価に正直で、自分を善人だとは思っていなかった。恨みがあれば即座に仕返しをするタイプで、ドアマンが何らかの理由で彼女に威圧的な態度を取ったのなら、必ず仕返しをしなければならなかった。本来なら個室を自分で探すこともできたが、今はドアマンを少し困らせる必要があった。

彼女の言葉を聞いて、ドアマンは仕方なく笑顔で「かしこまりました。こちらへどうぞ」と言った。

野村香織は頷き、優雅に後ろについて入っていった。しかも、わざとゆっくりと歩いた。ゴールデンベイは毎日多くの客を迎えており、ここのドアマンは目が肥えているはずで、服装だけで人を止めることはないはずだった。

最も重要なのは、天満奈津子の名前を出した時にドアマンが知っていたことで、これは多くのことを物語っていた。野村香織は口角を上げながら、この借りを天満奈津子に記憶しておいた。彼女にこんな仕打ちをするなんて、面白いことをしてくれる。

999号室の前で、ドアマンは野村香織に笑顔で示しながら「お嬢様、こちらでございます。他にご用がなければ、私は他の業務に戻らせていただきます。何かございましたら、こちらのスタッフをお呼びください。ごゆっくりお楽しみください」と言った。

ドアマンを一瞥して、野村香織は尋ねた。「ここのドアマンの月給はいくらですか?」

ドアマンは驚いた表情で野村香織を見つめ、なぜそんな質問をするのか分からなかったが、正直に答えた。「基本給と成果給、皆勤手当を合わせて、だいたい月7万円ほどです。何か問題でも?」

野村香織は頷き、さらに尋ねた。「正直に言いなさい。天満家の方々からいくら貰ったの?」

この言葉を聞いた途端、ドアマンの顔色が一気に青ざめ、野村香織を見る目が泳ぎ始めた。彼女がこの質問をできるということは、すべてを見抜いているということだ。もしこの件が支配人の耳に入れば、この高給の仕事を失うかもしれないことを、彼は十分理解していた。

「私は、その...」ドアマンはもごもごと言葉を濁し、まともな文章を作れなかった。

彼の様子を見て、野村香織は軽く笑って言った。「もういいわ。こんな愚かなことは今後控えめにした方がいいわよ。わずかな金のために職を失うのは得策じゃないわ。河東で仕事を見つけるのは簡単じゃないのよ」