第166章 深夜の覗き見

「おい、大輔、真面目な話なんだけど、あの回転式の壺って本当に贋作だと思うか?」と青木翔が尋ねた。

渡辺大輔は嫌そうに白い目を向けて言った。「私の予想が間違っていなければ、天満家の方々が壊したのは贋作だろうな。」

「え?お前も贋作だと思うのか?何か根拠はあるのか?」と青木翔は追及した。

渡辺大輔は冷ややかに鼻を鳴らした。「普段から少しは本を読んで知識を蓄えていれば、そんな馬鹿な質問はしないはずだ。あのピンク色の透かし彫りの回転式の壺は一対しかない。その一対の壺は別々の人に売られたが、私の知る限り、その二つとも天満春生の手元にはないはずだ。」

今日初めて、彼は青木翔とこれほど多くの言葉を交わした。これでも控えめに話したほうで、そうでなければ、この一対の壺の由来と背景の歴史だけでも半日は語れただろう。

「マジかよ、そんなはずないだろ。叔父さんは骨董品マニアで、あの壺を買う前にかなり勉強したはずだぜ。わざわざ多くの権威ある専門家に鑑定してもらって、それで大金を払って買ったんだ。」と青木翔は信じられない様子で言った。

渡辺大輔は淡々と言った。「一千万で数人に芝居を打たせて叔父さんに見せるのは、そんなに損だと思うか?」

「うっ...確かにそうだな。叔父さんは騙されたみたいだ。まずい、急いでこのことを伝えないと。でないと大損するじゃないか。」青木翔はそう言って、食事も終わらないうちに席を立った。

渡辺大輔は彼を止めようとはせず、ただ注意を促した。「明日、野村香織に謝りに行くのを忘れるなよ。」

青木翔は「...渡辺のやつ、女のためにここまで兄弟を追い詰めるなんて、お前人間か?完全に色に目がくらんでるじゃないか。絶交するからな!」

しかし、彼の抵抗に対して、渡辺大輔は完全に無視を決め込み、優雅に食事を続けた。青木翔は完全に言葉を失った。

...

花浜ヴィラにて。

野村香織は風呂上がりに、花瓶に生けられた青いバラに目が留まった。すでに二日が経っているのに、この花は萎れる気配もなく、むしろ日に日に香りを増していくようだった。

もし今日駐車場で渡辺大輔に会わなければ、この花が彼からのものだと知らずにいられて、もう少しちゃんと鑑賞できたかもしれない。でも今は青いバラを見るたびに吐き気を感じる。