第172章 年会の準備

彼は野村香織とはあまり接触がなく、というよりも数回しか会ったことがないのだが、彼女のことはよく理解していた。以前は渡辺大輔の前では唯々諾々として、へりくだっていた女性が、今では全く異なる人物になっていることを、彼は十分承知していた。彼女の強気な態度は少しも意外ではなかった。

……

野村香織が電話を切ったばかりのところに、小村明音から電話がかかってきた。電話に出るとすぐに、明音は不満げに言った。「さっき誰と話してたの?もう2回もかけたのに、ずっと話し中だったわよ。」

野村香織は笑って答えた。「ああ、大したことじゃないわ。」

小村明音は執拗に聞き返した。「だめよ、はっきり言わなきゃ。一体誰からの電話がそんなに重要で、私の電話も出られないほどだったの?」

野村香織は仕方なく答えた。「天満奈津子の実の父親、天満春生の秘書からの電話よ。これで満足?」