舞台の上で、抽選会が終わり、景品の引き換え式が行われていた。多くの人が次々と舞台に上がって賞品を受け取る中、司会者が素早く数字を読み上げ、渡辺大輔の手元の当選券の番号と一致した。
彼が長い間反応しないのを見て、青木翔は彼の脚を軽く蹴った。「おい、耳が聞こえなくなったのか?呼ばれてるぞ?」
渡辺大輔は彼を睨みつけ、立ち上がって服を整えてから舞台に向かって歩き始めた。観客の視線を浴びながら、渡辺大輔の表情は無表情のままだった。彼が現れたことに、多くの来賓が驚きを隠せなかった。
男が舞台に向かって歩いてくるのを見て、野村香織も一瞬驚いたが、すぐに平常心を取り戻し、自ら手を差し出して渡辺大輔と握手をした。そして「渡辺社長、三等賞の2万元の当選、おめでとうございます」と言った。
渡辺大輔は彼女を見下ろして「どうも」と言った。
野村香織から渡された2束の現金を受け取り、渡辺大輔は彼女に頷いてから舞台を降りた。戻る途中、彼は先ほど野村香織と握手した手をずっと見つめていた。手のひらにまだ余温が残っており、野村香織の手の柔らかさと滑らかさが忘れられなかった。
間違いなければ、先ほどの握手は、離婚後初めて公の場で穏やかに接した瞬間であり、野村香織が彼に優しい笑顔を向けた最初の瞬間でもあった。
15分後、野村香織は最後の賞金を渡し終え、盛大な拍手の中、優雅に舞台を降りた。ウェイターから新しいジュースを受け取り、このジュースを飲み終えたら帰ろうと考えていた。
そのとき、柴田貴史と雑談していた杉村俊二が彼女に近づいてきた。杉村俊二は魅力的な声で「野村さん、お疲れ様です」と声をかけた。
野村香織は彼とグラスを軽く合わせながら「どうですか?初めてのドラゴンキングの年末パーティーの感想は?」と尋ねた。
杉村俊二はぶどうジュースを一口すすり、野村香織に親指を立てて「一回の年末パーティーで1000万元もの賞金を出して、しかもヨットの上で開催するなんて、ドラゴンキング・エンターテインメントのオーナーは本当に太っ腹ですね!」
年末年始は誰もが忙しく、杉村俊二も例外ではなかった。二人は偽装恋愛の契約を結んでいたものの、普段の仕事が忙しすぎて会う時間がなかった。さらに元旦の日に天満家で起きた出来事で、杉村俊二は自責の念と気まずさを感じていた。