第197章 玄関前に立ちはだかる2人

野村香織は渡辺家に嫁いで三年、ずっと二見碧子に圧迫され続けていた。当時、二見碧子は高貴な皇太后のような存在で、野村香織はせいぜい下女程度の扱いだった。こんな柔らかい口調で話しかけられたことなど一度もなかった。

だから二見碧子からすれば、今このような柔らかい口調で話すことができるのは、すでに野村香織に十分な面子を立てているつもりだった。野村香織がこの好意を理解できないなら、容赦しないつもりでいた。

野村香織が黙っているのを見て、渡辺奈美子は脅すように言った。「警告しておくわよ、香織さん。大人しく引き下がった方がいいわ。この件はまだ兄が介入していないから、まだ取り返しがつくわ。兄の性格がどんなものか、あなたが一番よく分かっているはずでしょう」

渡辺奈美子の言葉を聞いて、野村香織は思わず笑みを漏らした。「いいわね。渡辺大輔のことを持ち出さなければよかったのに。せっかく出してきたなら、彼の性格がどれほど悪いのか、私も見てみたいわ」