第196章 意外な人物

野村香織は頷いたが、表情には少し困惑の色が見えた。「調べはしたんですが、でも……」

野村香織の秘書であり、熱烈なファンとして、彼女は常に野村香織の状況を注視していた。多くの仕事は野村香織からの指示を待たずとも、思いついたら先回りして手配していたため、彼女はとっくにあの親切なネットユーザーに注目し始めていた。

彼女のその様子を見て、野村香織は少し驚き、斎藤雪子は長年彼女と一緒にいたが、このような表情を見せることは稀だった。そこで尋ねた。「でも何?そんなに驚くようなことなの?」

斎藤雪子は苦笑いして言った。「野村社長、資料はすでにメールでお送りしました。直接ご覧になった方がいいかと…」

野村香織は頷いた。「わかったわ。ちょうど私も、誰があなたをそんなに驚かせたのか見てみたかったところよ」

しかし、メールを開いた時、彼女の表情も一瞬固まった。つぶやくように言った。「なるほど、あなたがそんな反応をするわけね。確かに意外だわ」

斎藤雪子の電話から、野村香織はこの親切なネットユーザーが必ず知っている人物だと理解していた。しかし、どんなに考えても、その人物が川井遥香の実の妹、川井若菜だとは思いもよらなかった。

斎藤雪子の声が響いた。「野村社長、それ以外にもネット上の多くの投稿が川井若菜が人を雇って書かせたものだと判明しました。彼女は数人のインフルエンサーにお金を払って世論を操作させていたようです」

それを聞いて、野村香織は口角を歪めた。「ふふ、この川井若菜、一体何を企んでいるのかしら?」

彼女のアーモンド形の瞳に言い表せないほど深い光が宿るのを見て、斎藤雪子は心臓が数拍抜けたような感覚を覚えた。急いで野村香織の視線を避け、必死に心を落ち着かせようとしたが、頬は熱く赤くなっていった。野村香織のこの魅力は、これほど長く側にいても、斎藤雪子には抗えないものだった。

斎藤雪子の小さな仕草は、野村香織の目に全て映っていた。そこで魅惑的な表情で彼女を見つめながら言った。「どうして私を見られないの?」

斎藤雪子は言葉を詰まらせた。「い、いえ、そんなことは…」

野村香織の声はさらに艶やかになった。「じゃあ、私に抵抗したいってこと?教えて、どうやって抵抗するつもり?」