別荘に入ってから、野村香織は特に玄関の監視カメラを確認しに行き、渡辺奈美子と二見碧子がもう玄関で待ち伏せしていないことを発見した。やはり同じもの同士で対抗できるものだ。渡辺大輔の親族を切り捨てる手腕は相当なものだった。
春節まであと数日となり、小村明音と柴田貴史は年越しを奉天市で過ごす予定で、特に野村香織に一緒に行かないかと尋ねに来た。香織は最初、邪魔をする気はなかったが、考えた末に承諾した。
奉天市は非常に長い歴史を持つ古都で、和国全体でも有名な都市の一つだ。現在は科学技術が発展しているものの、奉天市は昔ながらの建築物や文化的景観を多く残している。香織が奉天市での春節を承諾したのは、完全に彼女が奉天市に不動産を所有していたからだ。それは両親が亡くなった後に残してくれたもので、両親も奉天市に埋葬されているため、奉天市は彼女の故郷とも言える。
本来なら奉天市に定住するつもりだったが、人間の計画は天の配剤にかなわず、3年前に渡辺大輔と結婚して渡辺家の嫁となり、一人で奉天市に住むわけにもいかなかった。実際にかなり長い間帰っていなかったので、年越しの機会に帰って遊びに行くのは良い。その街には、彼女の若かりし頃の思い出が至る所に溢れている。
渡辺秀雄の件については譲歩するつもりはない。今や二見碧子と渡辺奈美子が騒ぎを起こしたことで、香織はますます譲歩する気がなくなった。誰もが自分の行動に責任を持つべきだ。秀雄は飲酒運転で逃げたこと自体が違法なのだから、刑務所で年を越させればいい。
以前渡辺家にいた時、渡辺秀雄は常に海外で勉強していたため、普段の接触は少なかった。去年の9月に卒業して帰国するまで、過去3年間は春節の時だけ渡辺家の人々と団らんしていた。
秀雄が帰国するたびに、海外で知り合った悪友たちを連れて渡辺家に来ていた。彼女と大輔が結婚して2回目の春節の時、秀雄の友人が酔っ払って彼女に抱きついてきたことがあった。その時、彼女は即座に背負い投げを決め、相手は死にかけたほどだった。そしてこの暴力的な場面は、密かに隠れていた秀雄に撮影され、それを脅しに使って謝罪を強要された。
一つ一つの出来事が香織の頭に刻まれており、忘れたくても忘れられない。今や秀雄が自ら進んで罠にはまってきたのだから、元義姉として当然きちんと清算しなければならない。