桜花グランドホテル、3階888号室。
野村香織と夏川静香が前後して個室に入ると、香織が完全に入室する前から、部屋の中の同級生たちは彼女の美しさに完全に魅了されてしまい、男女問わず、全員が彼女から目を離すことができなかった。
現代社会では、容姿の良さこそが唯一の真理だ。皆は香織が10年前よりもさらに美しくなり、より魅力的になったと感じていた。これほどの年月が経ち、歳月が彼女の顔をさらに完璧に彫琢していた。
同級生の中で、夏川静香はすでに屈指の美人だった。特にファッションに気を使い、流行を追い求める彼女は、普段街を歩いていても振り返られる率が非常に高かった。
しかし、香織と並ぶと、その存在感は一瞬にして香織に覆い隠されてしまう。元々精巧な化粧をした顔も色あせて見え、体型も顔立ちも、香織と比べると何かが足りないように感じられた。特に雰囲気の面では、彼女が路傍の艶やかな花だとすれば、香織は厳冬に咲く雪梅のように、清冷で優雅で、比類なき存在だった。
この10年間の同窓会で、静香は毎回登場するたびに全員の視線を集め、間違いなく会場で最も輝く女性だった。しかしそれは香織が不在だったからこそで、皆の表情と眼差しを見て、彼女はようやく思い出した。香織がいる場所では、自分は引き立て役でしかない、香織を引き立てる脇役でしかないのだと。
恍惚として、静香はまるで自分がまだ10代の少女だった頃のような錯覚に陥った。まるですべてが高校時代に戻ったかのように、香織と小村明音がいれば、自分はまるで誰にも注目されない置物のような存在だった。
同級生の中で、山本春雨は静香と最も仲が良く、そのため山本の彼氏も無事に静香の夫の会社の部門マネージャーになることができた。そのため山本は近年、静香に対して極めて献身的で、彼女を見かけるとすぐにでも土下座して媚びようとするほどだった。過去の同窓会では、山本は静香を天まで持ち上げ、まるで仙女が天界から降りてきたかのように褒め称えていた。
今日も彼女は静香におべっかを使うつもりで、そのために昨夜わざわざネットで人を褒める流行語をいくつも集めていたのだが、香織を見た瞬間、口まで出かかっていたおべっかを全て飲み込んでしまった。