野村香織は無表情で頷き、一言も返したくなかった。昨日予想した通り、この山本春雨は本当に性懲りもなく、デマを流し始めた。
しかし、山本春雨は野村香織の機嫌が悪いことに気付かず、へらへらと笑っていた。もし斎藤雪子が今の野村香織の様子を見たら、きっと顔が青ざめるだろう。社長は美しいが、怒り出すと非常に恐ろしいのだ。
山本春雨は続けて言った。「それと、夏川静香たちがあなたの連絡先を欲しがってたから、私が教えてあげたの。都合が良ければ、承認してあげてね。私たちは同窓生なんだから、連絡が取れる同級生はこれだけしかいないし、しっかり連絡を取り合わないとね。」
野村香織はビデオ通話の中の山本春雨を静かに見つめ、またも一言も発しなかった。一方、山本春雨は一方的に話し続け、同窓会の場所と個室番号を伝えるのを忘れそうになっていた。
野村香織はビデオ通話を切り、予備の携帯電話に複数の見知らぬ人からの友達申請が届いているのを確認した。冷ややかな目で一瞥したが、一つも承認せずに画面をロックして脇に置き、メインの携帯電話を手に取った。
……
奉天市中心部で、山本春雨は切れた携帯画面を見つめ、すぐに「姉妹グループ」のチャットアプリを開いて夏川静香たちにメッセージを送った。「野村香織に連絡したわ。明日の同窓会には90%の確率で来ると思う。」
数秒後、グループで誰かが返信した。「すごいじゃない、効率いいわね!」
山本春雨は更に書き込んだ。「知ってる?野村香織は今、河東で最も有名なエンターテインメント会社の社長よ。地位もあるし、お金もある。」
誰かが返信した。「そうよ、私も詐欺対策プラットフォームで確認したけど、あのドラゴンなんとかエンターテインメント会社は、登録資本金だけで100万円もあって、数年で小規模企業から大手エンターテインメント会社に成長したの。河東では、ブルーライトメディアと清正エンタメと並んで三大エンターテインメント企業と呼ばれてるって。」
この発言に対して、別の人が反論した。「ふん、たかがエンターテインメント会社じゃない。静香の旦那さんの会社と比べられるわけないでしょ。あっちは全国トップ500に入る優良企業なのよ。」