第210章 豚にも及ばない

野村香織は気にせずに言った。「大丈夫よ。あの子は昔から口が悪くて、あちこちで人の悪口を言うのが好きで、陰で色々なデマを流すの。学校の時も、みんな彼女がどんな人か知ってたわ。でも私は彼女とそこまで深い関係じゃないし、もし彼女がそんな風に私にまとわりつきたいなら、女の度胸があると認めてあげるわ」

彼女がそんなに自信満々なのを見て、柴田貴史は頷いた。自分が考えすぎていたのかもしれない。今や野村香織はあんな立場なのだから、こんな些細な問題くらい解決できるはずだ。

……

40分後、柴田貴史の護衛の下、野村香織はようやく自宅に到着した。部屋に入って簡単に片付けをした後、携帯を取り出して小村明音に電話をかけた。「今日誰に会ったと思う?」

電話の向こうで、小村明音は興味津々で尋ねた。「誰?もしかしてイケメンとの運命の出会いでも?」

野村香織は眉を上げて言った。「山本春雨よ」

一瞬の沈黙の後、小村明音の声が聞こえてきた。「どうして彼女に会ったの?山本春雨がどんな人か、私たちは十分わかってるでしょ。あなた、彼女には近づかない方がいいわ。彼女があなたに挨拶してきたの?」

野村香織は言った。「私とあなたの彼は彼女に気付かなかったけど、彼女の方から私たちに挨拶してきたの。それに明日の高校同窓会に誘われたわ」

この言葉を聞いて、電話の向こうの小村明音は即座に興奮した。「高校同窓会?香織ちゃん、警告しておくけど、その会には行かない方がいいわよ。同級生たちへの思い入れはさておき、山本春雨のあの毒舌だけでも十分うんざりでしょ」

野村香織は口角を上げて「それで?」と言った。

小村明音はソファから飛び上がって「だから絶対に行かないで。まさか行く気になってるなんて言わないでよ」

彼女がそんなに大きな反応を示すのを見て、野村香織は笑って言った。「安心して、私は彼女を断ったわ。たとえ承諾したとしても、本当に行くかどうかわからないし」

そう言いながら、彼女は淹れたばかりのお茶を一口すすった。このお茶は空港の免税店で買ったもので、最初の一口で今年の地元の新茶だとわかった。