川井星秋は一言も言わず、振り返りもせずに、服を着てバッグを手に取ると個室を出て行った。今夜の食事は不愉快で、交渉はさらに彼を怒らせた。今は一言も余計なことを言いたくなかった。
鈴木秘書はまず野村香織たちに申し訳なさそうに笑いかけ、その後急いで川井星秋の側に駆け寄り、諭すように言った。「社長、今は意地を張る時ではありません。冷静に分析してみれば、先ほどの野村さんの言葉は間違っていません。我が社は今、負債だけで5億円もあります。もし10日や半月引き延ばせば、5億円が7億円、8億円になるかもしれません。しかも負債が大きくなればなるほど、我が社を引き受けてくれる人はいなくなります。最後に負債に押しつぶされたら、12億円も手に入らないし、この件が川井社長の耳に入ることになります。そうなったらどうなるか、考えてみてください。」