第287章 バッグを奪う

鈴木お婆さんは野村香織のバッグを強く引っ張りながら、口を止めることなく言い続けた。「香織、お前この恩知らずの畜生め。今じゃ大きくなって羽が丈夫になって、私が面倒を見てやった昔とは違うんだな。はっきり言っておくが、今お前の叔父さんが外で困っていて、たくさんのお金が必要なんだ。お前はそんなにお金持ちなんだから、助けようが助けまいが、助けなきゃならないんだ！」

この言葉を聞いて、野村香織の表情は一層暗くなった。鈴木お婆さんを見る目は絶望と冷酷さに満ちていた。絶望は、この世に残された最後の血縁関係への絶望であり、冷酷さは、この瞬間に本当にこの親戚関係を切り捨て、これからは祖母の家族に一切の情けをかけないという決意からくるものだった。

「はっ、金が欲しいなら金が欲しいと言えばいい。大げさな言い訳は余計だわ。お金が欲しいというのが、あなたたちの唯一の目的でしょう。でも、あなたたちがどんな問題に遭おうと、私には何の関係もないわ」と野村香織は冷笑した。

「その言い方はどういう意味？つまり、私たちにお金を出すつもりはないってことね？」鈴木お婆さんは野村香織を見つめ、険しい表情を浮かべた。

野村香織は怒るどころか笑みを浮かべ、通りの向かいにある銀行を指差して言った。「銀行に行ってみることをお勧めするわ。あそこにはたくさんのお金があるから、五百万円なんて幾らでもあるわ。ただ、銀行があなたたちを助けてくれるかどうかは分からないけどね」

野村香織は鈴木お婆さんの手を振り払おうとしたが、お婆さんは必死にバッグを掴んでいた。お金を出す気がないと分かると、鈴木お婆さんは怒りが込み上げ、もう片方の手でもバッグを掴み、全力で野村香織と引っ張り合いを始めた。

「お前この縁起でもない物、損な女め。九十万円もするこんなバッグを買うくせに、叔父さんの借金返済のために少しも貸そうとしないなんて。言っておくが、もし叔父さんが借金を返せなくて手足を切られでもしたら、絶対にお前を許さないからね。こんな高いバッグなんて、お前なんかに持たせるのはもったいない。さあ、よこしなさい！」鈴木お婆さんは罵りながら、全力でバッグを引っ張った。